香月泰男のふるさとを訪れる ― 石原吉郎を読んで思い立つ ―
洋画家・香月泰男のシベリア作品群は、黒で表現されている。
シベリア体験を持つ詩人・石原吉郎は生前、香月の作品に対してコメントを残している。
「その漆黒の背後に色彩を感じる」という主旨の感想であり、賛辞を込めたものだった。
香月は帰還後すぐにシベリア体験を表現したのではなく、8年間くらいの空白があった。
詩人にとっての「失語」のように。
■香月泰男美術館
平日の昼下がりに、香月泰男美術館へ。
長時間ドライブの末にたどり着いた、初めての美術館。
駐車場に車を止めて、小道を歩くと、左手に香月の代表作の拡大版が見えてきます。
漆黒の闇の中で、個性を排した名もなき人々が何かを訴える。
顔の表情、手の感じ。唯一無二の表現です。
建物全体は、長門市三隅の豊かでのどかな自然のなかに、溶け込んでいるように思えました。
中に入ると、来館者は私カジユア以外になく、自分のペースでゆっくりまわることができました。有名な《シベリヤ・シリーズ》の一部と、企画展「風景へのまなざし ―日本編―」。企画展の風景スケッチ画は、明るい色彩で素朴なタッチ。のびやかさがあり、よかったです。木彫りのおもちゃのコーナーや、再現アトリエもあり、見ごたえがありました。作品に対する人気投票のような企画もあり、ひっそりと参加してみました。
■中庭の試み
美術館内部をまわった後、中庭に出ました。そこには、木彫りのかわいいオブジェがあったり、ベンチもあったりして、くつろげます。中央には、香月がシベリアから持ち帰って育てた豆の木の子孫の木があります。それを眺めながら、ぼんやりして過ごしました。この日は晴天。青い空に漂う雲が、心に幸福を誘います。
■売店
香月作品グッズや関連書籍、ハーブの加工品が売られていています。
私は写真集(解説本)『香月泰男 おもちゃの世界』を買って館を後にしました。
■近くにハーブガーデン
ハーブ園工房 ゆめうさぎ。
美術館を出るとすぐ横にあります。
6月にはイベントがあったようです。
さすがに、ハーブたちも暑さに負けてしまっている様子でしたが
ほんのり爽やかな香りを楽しめました。
■また来たい♪
思えば、カジユアの祖父もシベリア体験者。
ずいぶん、苦労の多い人生だったようです。
また来たいな、と思いました。
次の企画展も見てみたい。
命をありがとう、じいちゃん。